アマチュア無線を楽しむ上で、無線機とアンテナを繋ぐ同軸ケーブルの選択は、交信の成否を分ける非常に重要な要素です。特に、高い周波数帯(VHF/UHF帯)や長距離配線において、信号の減衰(伝送損失)を最小限に抑える「低損失ケーブル」の採用は必須です。
数ある低損失ケーブルの中でも、フジクラ(藤倉コンポジット)製のFBシリーズは、その信頼性と性能の高さから、多くのアマチュア無線家から絶大な支持を得ています。
このブログでは、FBシリーズの核となる「低損失」の秘密に迫りつつ、アマチュア無線家にとって最もポピュラーな5D-FBと、取り回しやすさが魅力の8D-FB LITEに焦点を当て、あなたのシャックに最適な一本を選ぶためのポイントを徹底解説します。
なぜFBシリーズは「低損失」なのか?
FB(Foam Backed)シリーズが従来のケーブル(2Vシリーズなど)と比較して圧倒的に優れているのは、その内部構造、特に誘電体(絶縁体)の材質に秘密があります。
従来のケーブル(2Vシリーズ)
従来のケーブルは、中心導体を覆う誘電体にポリエチレン(固体)を使用していました。ポリエチレンは安価ですが、誘電率が高いため、信号伝送時にエネルギーが熱に変わりやすく、損失が大きくなるという弱点がありました。
FBシリーズの革新:発泡ポリエチレン誘電体
FBシリーズは、誘電体に発泡ポリエチレンを採用しています。
- 誘電率の低減: 発泡ポリエチレンは、内部に微細な気泡(空気層)を含んでいるため、誘電率が非常に低くなります。誘電率が低いほど、信号のエネルギー損失が小さくなり、伝送損失を大幅に低減できます。
- 伝搬速度の向上: 誘電率が低いことで、ケーブル内の信号の伝搬速度が向上し、高周波特性が改善されます。
この「発泡ポリエチレン」の採用こそが、FBシリーズが高周波帯(VHF/UHF)や長距離での運用で絶大な効果を発揮する最大の理由です。
FBシリーズを代表する二大巨頭の徹底比較
アマチュア無線家の間で特に人気が高い5D-FBと、その派生である8D-FB LITEについて、性能と特性を比較します。
A. 5D-FB:固定局の「標準」を担う低損失ケーブル
| 項目 | 5D-FBの特性 | 最適な用途 |
| 外径 | 約7.7mm(5Dクラス) | 標準的な配管・引き込み |
| 損失 | 5Dクラスとしては非常に低い | HF〜UHF帯の中距離(10m〜20m程度)配線 |
| 柔軟性 | 比較的硬め | 固定された配線箇所、長期安定運用 |
| 特長 | コストパフォーマンスと低損失のバランスに優れる | 固定局のメインケーブルとして最も標準的 |
【こんな方にオススメ】
- 初めて低損失ケーブルに替える方。
- 20m程度までの中距離配線で、VHF/UHF帯も運用する方。
- コストと性能のバランスを重視したい方。
B. 8D-FB LITE:低損失と「柔軟性」を両立
8D-FB LITEは、より低損失な8Dクラスの性能を保ちながら、ケーブル構造を工夫し、取り回しやすさ(柔軟性)を向上させたモデルです。
| 項目 | 8D-FB LITEの特性 | 最適な用途 |
| 外径 | 約10.3mm(8Dクラス) | やや太めだが、8D-FBより細い |
| 損失 | 8Dクラスに近く、5D-FBよりも低損失 | VHF/UHF帯の長距離(20m超)配線 |
| 柔軟性 | 8D-FBに比べると非常に柔軟 | ケーブルの曲げが多い配線、移動運用 |
| 特長 | 低損失と取り回しやすさを両立 | 長距離でも減衰を抑えたいが、配線が複雑な環境 |
【こんな方にオススメ】
- 430MHz帯以上をメインで運用し、長距離でも高性能を維持したい方。
- ベランダや室内など、ケーブルの曲げが多い複雑な配線環境の方。
- 「8D-FBの低損失が欲しいが、硬くて取り回しが難しい」と感じた経験がある方。
最適なFBケーブルを選ぶための決定打
どちらのケーブルを選ぶか迷った際、以下の観点から検討を深めてください。
チェックポイント 1:周波数と距離
| 運用周波数 | 運用周波数 | 推奨 | 理由 |
| HF帯 (〜50MHz) | 短距離〜中距離 | 5D-FB | HF帯は損失が少なく、5Dで十分な性能を発揮。 |
| VHF/UHF帯 | 中距離 (〜20m) | 5D-FB | 標準的な設置環境と性能のバランスが良い。 |
| VHF/UHF帯 | 長距離 (20m超) | 8D-FB LITE | 430MHz帯以上では8Dクラスの低損失が必須。LITEは設置しやすい。 |
チェックポイント 2:設置環境の制約
- 配管内を通す: 8D-FB LITEは5D-FBより太いため、既存の細い配管を通せない場合があります。事前に配管のサイズを確認しましょう。
- ローテーター周辺: アンテナ直下でケーブルを頻繁に動かす必要がある場合、柔軟性の高い8D-FB LITEが適しています。5D-FBは硬いため、負担がかかりやすいです。
FBシリーズの性能を100%引き出すには?
どれだけ高性能なFBシリーズを選んでも、その性能を台無しにしてしまうのがコネクタ加工の不備です。
伝送損失とSWRの改善に必須の「プロ加工」
フジクラFBシリーズは、構造上、従来の2Vシリーズよりもコネクタ加工に高い精度が要求されます。
- 発泡誘電体の扱いの難しさ: 発泡ポリエチレンは熱に弱く、ハンダ付け時の熱による変形や溶けが発生しやすいです。
- SWRの悪化: 不正確な加工は、接続部分でインピーダンスの不整合を起こし、SWRが大幅に悪化します。結果的に、せっかくの低損失のメリットが失われ、送信パワーがロスしてしまいます。
コスモケーブル株式会社では、フジクラFBシリーズの特性を知り尽くした熟練の技術者が、一本一本高精度なコネクタ加工を施します。
- 低SWRの保証: 経験に基づいた確かな加工技術で、ケーブル接続時のSWRを最小限に抑えます。
- 即日加工・発送: 必要な長さでカットし、即座に加工・発送するスピード対応で、お客様の設置スケジュールをサポートします。
「アマチュア無線の飛びを変えたい」— その鍵は、フジクラFBシリーズの低損失性能と、プロの確かな加工技術の組み合わせにあります。ご自身のシャックに最適なフジクラFBケーブルを選び、最高の無線ライフをお楽しみください。


