監視カメラシステムは、現代のセキュリティ対策に不可欠です。しかし、せっかく高性能なカメラを導入しても、「映像が途切れる」「ノイズが乗る」「長距離だと画質が極端に落ちる」といったトラブルに悩まされることがあります。
その原因の多くは、カメラ本体ではなく、信号を伝送する同軸ケーブルの選定ミスや不適切な配線にあることをご存知でしょうか?
このブログでは、プロの視点から監視カメラシステムで使われる同軸ケーブルの基本と、安定した高画質映像を実現するための正しい選び方、そして配線術を解説します。
監視カメラ用同軸ケーブルの基本
監視カメラシステムで使用されるケーブルは、主にアナログHDカメラ(AHD、HD-TVI、HD-CVIなど)の映像信号を伝送するために使われます。
1. インピーダンスは「75Ω」が標準
無線通信で使われる同軸ケーブルが50Ωであるのに対し、映像信号の伝送には75Ω(オーム)の同軸ケーブルが国際的に標準とされています。これは、カメラ、ケーブル、レコーダー側のインピーダンスを統一することで、信号の反射(エコーやゴースト)を防ぎ、クリアな映像伝送を可能にするためです。
2. ケーブルの種類:RG-59と3C-2V
監視カメラで一般的に使われる75Ωケーブルには、以下のような種類があります。
- 3C-2V / 5C-2V: 昔ながらの標準的なケーブル。比較的安価で柔軟性がありますが、伝送損失は大きめです。主に短距離配線(~50m程度)で利用されます。
- RG-59/U: 米国規格の75Ωケーブルで、監視カメラ分野で広く使われます。5C-FBなどの低損失タイプが登場してからは、長距離配線ではより低損失なケーブルが選ばれる傾向にあります。
- 5C-FB / S-5C-FB: 誘電体(絶縁体)に発泡ポリエチレンを使用した、低損失タイプのケーブル。同じ太さの2Vタイプに比べて信号の減衰が少なく、HD画質での長距離伝送(100m超)を可能にします。現在の監視カメラシステムの主流です。
これが原因!映像トラブルとケーブルの関わり
映像の乱れは、主に以下の3つの原因に分類できます。
1. 信号の「減衰(パワーロス)」:長距離配線での画質低下
ケーブルが長くなるほど、信号はエネルギーを失い弱くなります。これを減衰(ロス)と呼びます。
- 現象: 映像が暗くなる、色味が薄くなる、ディテールが失われる。長距離になるほど顕著。
- 対策: 太いケーブル(例:5C-FB)や、低損失ケーブルを選択する。特にHDや4Kの高解像度信号は、従来のSD信号よりも減衰の影響を受けやすいため、ケーブル選びが非常に重要です。
2. ノイズの「混入」:映像のちらつきや横縞
外部からの電磁波や電源ノイズがケーブル内に侵入することで発生します。
- 現象: 映像にランダムな「雪」のようなノイズが入る、一定の周波数で横縞模様が入る。
- 対策: シールド性能の高いケーブルを選ぶ。外部導体(編組)の密度が高く、アルミ箔などで二重シールドされたケーブル(例:S-5C-FB)は、外部ノイズの遮断に優れています。
3. インピーダンスの「不整合」:ゴーストやエコー
ケーブルやコネクタのインピーダンスが75Ωから外れたり、不均一になったりすることで、信号の一部が反射してしまいます。
- 現象: 映像に元の画像からわずかにズレた「ゴースト」や「エコー」が発生する。
- 対策: 高精度に加工されたコネクタを使用する。ケーブルの無理な折り曲げや潰れを避け、ケーブルの特性を維持する。
プロが教える監視カメラ用ケーブルの正しい選び方
安定した映像を確保するため、以下の基準でケーブルを選びましょう。
選び方 1:伝送距離と画質レベルで太さを決める
| 画質・解像度 | 伝送距離の目安 | 推奨ケーブル(75Ω) |
| SD画質 (従来型) | 〜100m | 3C-2V / 5C-2V |
| HD画質 (720p/1080p) | 〜150m | 5C-FB (低損失) |
| HD画質 (長距離) | 150m〜 | 7C-FB など太いもの |
| 4K/高解像度 | 〜100m | S-5C-FB または 極低損失ケーブル |
選び方 2:設置環境でシースの材質を決める
- 屋外配線: 紫外線や温度変化、水濡れに強いPE(ポリエチレン)シースや、耐候性に優れたPVC(ビニル)シースを選びましょう。特にケーブルの劣化は画質低下に直結します。
- 屋内配線: 難燃性が必要な場合は、JIS C 3502などの規格に適合した製品を選定します。
選び方 3:コネクタの加工はプロに任せる
監視カメラシステムでは、BNCコネクタやF型コネクタが主に使用されます。これらのコネクタをケーブルに正確に取り付ける作業(加工)は、前述の通りSWRやノイズ対策に不可欠です。
- プロ仕様の加工: 芯線の長さ、外部導体(編組)の折り返し、圧着の力加減など、すべてが正確でなければなりません。コスモケーブル株式会社のようなケーブル専門店に、必要な長さで高精度なコネクタ加工を依頼することで、映像トラブルのリスクを最小限に抑えることができます。
安定運用を実現する配線術
- 無理な曲げを避ける: ケーブルを90度など極端に折り曲げると、その部分でインピーダンスが不整合を起こし、反射の原因となります。ケーブルの推奨曲げ半径を守り、緩やかに配線しましょう。
- 電源線と離す: 映像信号ケーブルをAC100Vなどの電源ケーブルと並行して配線すると、電源ノイズを拾いやすくなります。可能な限り配線を分離するか、どうしても並行する場合は距離を離しましょう。
- 屋外コネクタは完全防水: 屋外のカメラ接続部や中継点では、水がコネクタ内部に侵入しないよう、自己融着テープとビニールテープで完全に防水処理を施します。水の侵入はケーブルの劣化と画質低下の主要因です。
まとめ
監視カメラシステムの安定稼働は、信頼できるケーブルの品質と正確な加工に懸かっています。コストを優先して不適切なケーブルや自己加工品を使うことは、結果的にシステム全体の信頼性を損ない、トラブルシューティングのコストを増大させます。
コスモケーブル株式会社では、監視カメラシステムに最適な75Ω同軸ケーブルを厳選し、お客様の設置環境に合わせた長さで、プロの技術者が高精度なコネクタ加工を一本から施し、即日発送も可能です。
安定した高画質映像の確保は、ぜひケーブルのプロにご相談ください。


